地をはう大学院生→ポスドク→国立大特任教員→私大専任教員

はてなダイアリーから引っ越ししてきました。昔の記録です。

自動車学校の教え、その2

「ダンプの運転手は恥ずかしがってトレーラーの横に車を付けたがらない」
これ、何かというと、とある運転手さんから聞いたお話。
何年も昔、自動車学校に通っていたある日、送迎のバスで運転手さんと二人だけになったことがあった。彼は昔トレーラーの運転手をしていたらしく、そのころの話をいろいろと聞かせてくれた。その中でひとつ、よく記憶に残ってることがあって、それがこれ。
最初どういうことかよくわからなかったので色々きいてみると、要するに大きい車を運転している方が偉い、というような価値観があるらしかった。そしてトレーラーは何も引っ張っていない状態ですらダンプよりも長いくらい大きいので、ダンプの人は恥ずかしがって横に来たがらない、というお話のようだった。
 
それで思い出したのが、阿川弘之さんの小説にあった一節。…かつて海軍兵学校出身者は大艦、できれば戦艦の艦長になるのをひとつの目標にしていた…というのも、自分の命令一下、大きな艦が操作されていくのが気持ちいいから、…というような話。
 
その時、こういう感覚って人間の本質かもしれないなぁ、と感じて面白かったのだった。
企業の経営者だって、株主資本を地道に育てることよりも、大きくて安定した企業を操縦することの方が楽しいと感じる人が多いはずで…。
金融系の会社の研修資料とか、株主価値の最大化が企業経営の目標です、みたいなことを書いてあるけど、企業の中の人がそういう教科書的なことをどれだけ本気で信じているか、あるいは信じていても実践しているか…。(…増資とか平気でしまくるし)
 
というわけで、そういった中の人の嗜好や行動学的なことを理解するのも何かの役に立ちそうだなぁ…、というのをバスの中で考えたのだった。