地をはう大学院生→ポスドク→国立大特任教員→私大専任教員

はてなダイアリーから引っ越ししてきました。昔の記録です。

縁あっていまの研究室に

合計6年在籍した研究室を巣立つときが近づいている。この研究室になぜやってきたか、記憶を辿ってみると、学部一回のころのちょっとした縁がきっかけだったように思う。
学部に入ってすぐ、生物学を勉強するサークルに入った。もともとカモノハシが好きだったことから、哺乳類の進化というものに興味をもち、徒然に本や論文を読む日々を過ごしていた。そんな中、大きく自分の興味を引いたのが、理研で研究室を主宰されていたK先生の本だった。その頃は怖いもの知らずだったこともあり、思い立ってK先生にアポを取り、サークルの仲間とともに研究室見学に出かけたのだった。(今でこそ学会などで遭遇すると蛇ににらまれた蛙のようになるのだが…、若さというものは恐ろしい。)
そこでいろいろと研究の話を伺ったり、自分のつまらない思いつきを聞いていただいたのだけど、そこで印象に残った先生の言葉があった。うろ覚えではあるけれど、「(学生が思いついた研究をする上で)ノックアウトマウス作っている研究者を紹介したり、設備のある研究室を紹介することもできるけど、そこまで指導者が面倒見ちゃったら一人前の研究者にはなれないのだ」というような内容の話だった。古典をとても重視されている先生で、おそらく古典の体節さを事あるごとにお話しされているのだけど、なぜか自分の印象に残ったのはその話だった。研究者たるもの、自力で(ネットワークを作るなり何なりして)研究する体制を整えられて初めて一人前ということなのだな、ということは研究者を目指していた自分にとって印象深い教えとなった。そして、その機会にご紹介いただいた、当時(私の今在籍している)研究室で院生をされていたTさんを訪ね、そこから今の研究室との縁が始まったように記憶している。
何気ない発言だったのだろうけど、そのとき受けた教え(?)は、院生時代自分の研究を行う上で大きな指針になったように感じている。何年か前、自分の思いつきを実現するため、手八丁口八丁でなんとか各方面の協力を得て、ある共同研究を始めることができた。そして、それももうすぐ形にできそうなところまでやってきた(…たぶん)。それがPublishされた時、10年越しではあるけれど、あのとき教えていただいたことを実行できたことになるのかなと、そんな思いを抱いている。もちろん、早く形にせねばという焦りと共に。